その女、由紀に出会ったのは某アパレル企業の入社式だった。
同期100人程が一堂に会した室内で、由紀が立ちあがって自己紹介した時、隣に座る貞森から「おぉ~」という歓声が聞こえた。
貞森は慌てて自分の口を押さえて真っ赤になっていたが、気持ちは俺も同じだった。
他の同期や研修の担当者までもが皆、声までは漏らさないまでも、ぼうっと由紀の美貌に見惚れているようだった。
可憐という表現がぴったりの、間違いなく同期で1番の美女だった。
いや、俺のそれまでの人生の中で、これほど魅力的な女に出会ったことはなかった。
気品あるノーブルな顔立ちと柔らかそうな髪がとても印象的で、スリムな体型にはリクルートスーツがとても良く似合っていた。
入社式も終わらぬうちから大規模な争奪戦が始まり、何人もの男達が、何かと話し掛けたりしているのが目に付いた。
当然、この俺も当たって砕けろの精神で何度となく声をかけたが、一度として誘いに乗ってはもらえなかった。
入社して半年くらいが過ぎた頃だったろうか。
嫌な噂を耳にした。
あの由紀が同期の市川と付き合っているというのだ。
俺にはとても信じられなかった。
たしかに、市川はかなりのイケメンだ。
歌舞伎役者の海老蔵を思わせる男っぷりは見た目だけなら同期一と言っても過言ではないだろう。
しかし、性格面は最悪だった。
市川はブラック企業の当社にしては、高学歴だったためか、いつも俺達を見下していた。
飲み会などにも参加せず、研修時のグループ課題も誰にも相談せずに勝手に一人で提出してしまうような奴だった。
控えめで謙虚な性格の由紀とは、まったく合わないように思われた。
しかし、その噂が真実であると、すぐに知ることになった。
市川自身が自慢気に語ったからだ。
それまで疎遠だったくせに、市川は由紀と付き合うようになってからは急に俺たち同期と飲みに行くようになった。
ヤツはその度に鼻の穴を膨らませながら由紀とのことを自慢気に話した。
市川の奴は、由紀だけじゃなく、上司からの評価も一人占めした。
ヤツは3年目にして会社から表彰され金一封を貰い、同期内で一番早く係長に昇進した。
そして、昇進を期に由紀と結婚した。
結婚の話を聞いた時、同期達でパーティーをやろうと持ちかけたが丁重に断られてしまった。
(お高く止まりやがって!)
仕方なく、主役のいないまま俺たち同期のモテない男達は、憧れの由紀ちゃんが完全に他人のものになってしまったと皆で夜通し飲み明かした。
そして、結婚から1年ほどすると市川は、こんなブラック企業からはとっとと独立して、由紀と2人で会社を興した。
最初はうちの代理店という扱いだった様だが、経営はかなり順調で、従業員を増やしたなどという話まで耳にした。
しかし、それから3年後くらいだろうか、市川の強運もとうとう尽きる時がやってきた。
リーマンショックに始まる不景気は、他人より運の良い人生を送ってきた市川にもどうすることも出来ず、彼の会社はあっと言う間に傾き、火の車になった。
噂では大口の取引先が倒産し、売掛金の回収も出来なかったと聞いている。
その大口を無くしてしまったからか、彼の会社の売上の大部分は当社が占めるようになっていたようだ。
その当時、俺は入社してちょうど9年目、30歳そこそこで課長という役職だった。
比較的早いうちに役職に就けることだけはブラック企業の良い点かもしれない。
決して大きな権限が与えられていたわけではなかったが、それでも代理店など下請業者に対する発注の多くを任されていた。
当然のことだが不況の波は当社にも訪れていたため、下請に対する発注も縮小することになっていた。
そんな時、市川が自分の会社を切らないで欲しいと頭を下げに来た。
かつて散々見下してきた同期の俺に頭を下げる市川を見て、よっぽど経営が苦しいのだろうと考え、(これは、もしかしたら?)と提案してみた。
「経営苦しいの?だったらさ、奥さんをうちに復帰させたらどうかな?うちの部署、急に寿退職しちゃった女子がいてさ、人手足りないんだよね。奥さんだったら元社員で仕事できるの知ってるから、かなり助かるんだけど?うちに恩も売れるし、発注の部署だから、そちらにもなにかと好都合じゃない?」
それほど深く考えずに言ってみたのだが、市川はあっさりと承諾し、とんとん拍子で話は決まり、週明けから由紀がアルバイト社員として勤務することになった。
さっそく俺は、高野や貞森などの悪友に連絡し、計画を練ることにした。
もちろん、由紀を堕とす計画だ。
何年も思い焦がれた美女が自分の下で働くことになったのだ、手を出さないという考えはない。
アルバイトの初日、数年ぶりに会った由紀は、相変わらずの美しさだった。
不景気で苦労もしただろうに、当時から全く劣化しておらず、むしろ以前には無かった色気が加わって、さらに美しさが増したようだった。
由紀が出社することを聞きつけた同期達が用もないのに俺の席まで来ていたが、そのうちの高野などは、ぽかーんと口を開けて間抜けな顔で見惚れているようだった。
「昔と全然変わってないよな」
入社時の由紀、いつも可憐で凛とした、しっかり者の美女の姿を思い出しながら、彼女に散々スケベなことをさせるシナリオの成功を思って、俺は股間を熱くさせた。
皆の前に立ってハキハキと自己紹介する由紀の唇、薄化粧にピンクのルージュがとても良く映えていた。
「いずれ、あの唇でたっぷりと奉仕させてやる」
俺が漏らした何気ない一言に高野が生唾を飲み込んでから、「なんでも協力するよ」と返事をした。
他の同期達もそれぞれ真顔で頷き合った。
俺は由紀がバイトとして出社してきた初日から代理店への発注を任せることにした。
そして、発注締めのギリギリ、まともに確認できないだろうタイミングを見計らって別の仕事を振ってやった。
それでも聡明な由紀だ、きちんと発注数は合っていた。
俺が修正しなければだがw
そして、待ちに待った納入日、社内は大慌てだった。
1000個のはずの発注が10000個となっていたのだから当然だ。
アルバイトの由紀が出社してくる前に俺は由紀の教育係を呼びつけ、思い切り叱りつけた。
「どういうことだ!彼女は元社員で誰もが認める優秀な社員だ!それが、こんなミスをしたのは、教育係の君がしっかり教えなかったからだろ!君の責任で、きとんと対処しろよ」
あえて大勢の前で叱りつけた。
教育係と言っても20代の女性だ、皆が黙って見守る中、目に涙を溜めているようだった。
由紀が出社すると、すぐに教育係の声が聞こえてきた。
「由紀さん、◯◯社への発注、数をちゃんと確認しなかったのですか?」
怒っているであろうことは声音から誰の目にも明らかだったはずだ。
「まさか、自分の旦那の会社だからって、故意に多く発注したんじゃないでしょうね?」
(ほほう。高野の言う通り、やっぱそうきたか)
当社の女性陣は昼食になると、皆で一緒に会議室へ行く。
しかしこの日は、由紀だけが一人取り残されて不安げにキョロキョロしていた。
俺はその様子を見て、密かにほくそ笑んだ。
(あのスケベ禿げめ、人をよく見ている)
実は、彼女を由紀の教育係にしたのは人事の高野の発案だった。
この日から由紀は職場の女性陣から完全に孤立してしまった。
それから3日経つまで、逸る気持ちをなんとか抑えつけながら待って、俺は由紀を飲みに誘った。
「申し訳ございません。予定があります」
あっさり断られてしまった。
しかし、現在の俺と由紀の関係は新入社員の時と同じではない。
「何、勘違いしてんの?仕事の話をしようと思ってるんだけど?」
それを聞いて、明らかに由紀が迷っているのが分かった。
もう一押しだ。
「教育係のせいだとは思うが、いきなり大きな失敗したから心配してるんだよ」
『教育係のせい』という言葉を若干強めにして、皆に聞こえるように大声で言うと由紀は、「違います」と小声で肩を震わせた。
「周りとあまりコミュニケーションとれてないみたいだし、大丈夫なの?」
由紀がびくっと震えたのを確認してから俺は声をひそめた。
「ここで皆の前で話すより、場所を変えて話した方が良くないか?」
「は、はい、すみません」
苦節8年。
この日、俺はようやく由紀を誘い出すことに成功した。
初めて由紀を誘った時から、既に8年の月日が過ぎていた。
そのことを思うと妙に感慨深い気持ちになった。
その後は、何度もシミュレーションしたプランを実行するだけだった。
場所は会社の最寄り駅のすぐ近くにあるホテルのバーを選んだ。
まず席に座ってすぐに、由紀が周囲から浮いていることを指摘した。
「君、みんなに嫌われているよ」と言うと由紀は泣きそうな顔になった。
そして、さらに追い込むため、徹底的に由紀の失敗を責め、二度と失敗しないためのプランを今すぐ考えろと詰った。
申し訳なさそうに俯きながら、必死に対策を考える由紀を尻目に、「なるべく口当たりの良い飲みやすいワインを」と店員に頼んだ。
ワインが来ると、「アルコールはちょっと・・」と由紀が言い出す前に、会社や俺、特に教育係の彼女が、どれだけ苦境に立たされたかをオーバーに話しながら、グラスにワインを注いだ。
予想通り、由紀は文句を言い出せずに、俺が軽くグラスを掲げると、慌てて自分もグラスを持って、カチンと合わせてから一口飲んでくれた。
その後も、「まだか?早くプランを聞かせろ」と急かしながら、由紀の話が途切れる度にワインボトルを掴んで由紀のグラスに注ぐと、緊張から喉が渇くのか由紀はグラスのワインをどんどん空けていった。
アルコールで由紀の顔が上気してきたのを確認してから、由紀の失敗を責めることは止め、話題を市川の会社の状況や同期で研修した時の思い出話などに変えていった。
すると、少し安心したのだろう。
飲みやすいからと勧めたカクテルを疑いもせずに飲んでいった。
マティー二、アレキサンダー、モスコミュールと飲ませると、すぐにべろんべろんになった。
「ツレがこんなだから、料金は部屋に付けてくれるかな?」
店の者にそう告げてから、俺はドキドキしながら由紀に肩を貸す形で抱えるようにして、バーを後にした。
当然のことだが、まともに由紀に触れるのは初めてのことだった。
甘い香りにクラクラしながら寄り添って歩いていると、どうにも、逸る気持ちを抑えられなくなってきた。
まだホテルの廊下だったが周りに人気もなさそうだ。
しかも由紀は完全に意識がない状態だ。
慣れない職場環境や人間関係から相当疲れていた上に、かなりの酒が入っている。
しばらくは、起きないはずだ。
俺は思い切って、胸の膨らみを軽く揉んでみた。
予想通り泥酔状態の由紀からは全く抵抗がなかった。
長年思っていた女の胸を自由にしてると思うと堪らなかった。
自然と生唾が口の中に広がってくる。
俺は一度ゴクンと唾を飲みこんでから、あの形の良い唇に吸いついた。
ここまでしても、由紀は酔っ払って何がなんだか分からない感じだった。
由紀を抱き締め、唇を貪りながらヨロヨロとした足取りで部屋まで辿り着くと、すぐに羽織っていたカーディガンを毟るように奪い取った。
強引に扱ってしまったことを若干後悔したが、運の良いことに、由紀は俺の腕の中で、ほとんど身動きせずに目を瞑ったままだった。
その整った美しい顔をじっくり見ながら、ゆっくりとワンピースを肩から抜いた。
きめ細かな白い肌が露わになった。
それにつれ、品の良い甘い香りがムンと立ち上ってゆく。
(たまんねぇ)
俺は首筋に沿ってチュッチュと口づけしながらブラジャーの肩紐をそっと肩から滑らせた。
おっと焦りは禁物だ。
念願の乳房を拝む前に、もう一度、じっくり顔と身体を見てやろうと思った。
ブラジャーだけになった上半身は、ほっそり華奢で、乳房の膨らみも、それほど感じられなかった。
そう言えば、飲んだ時、おっぱい星人の貞森が、「おっぱいは残念そうだ」なんて言ってたっけ。
確かに乳房だけは残念なレベルかもしれない。
が、乳房が小さい分、顔の美しさや肌のきめ細かさから、清楚な雰囲気が際立つ。
俺は由紀の背中に腕を回して、その滑らかな肌の感触を楽しんでから、ブラジャーのホックを外した。
この時、長いまつ毛が若干揺れたように感じたが、酒に酔って赤らんだ顔に変化はほとんどなかった。
(じゃあ拝ませてもらうか、皆が思い焦がれた、その貧乳)
俺は、その整った顔を眺めながら、起こさないように丁寧に、ブラジャーのカップを掴んで、すっと取り去った。
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